心の平安の領土を拡大しよう![ACのステップ10]

日々の棚卸しをやる目的はステップ9までの取り組みによって得た【霊的目覚め】を維持・拡大するためです。
はじめは小さくても後になると大きく拡大しているのに気づく時が必ずやってきます。

        

①ステップ1から9までやって得たものは霊的目覚め

ステップ4から9の行動のプログラムに取り組んだ結果、私たちは霊的に目覚めました。
霊的に目覚めるとは「回復するために十分に人格が変化すること」を指しています。(ビックブック266頁3行目)
では回復するのに十分な人格の変化とは何かと言えば、それは【視点の変化】です。

【視点の変化】が起点となって、次に【行動の仕方】(行動パターン)が変わります。
さらに【行動の仕方】がある期間にわたって変わり続けると、今度は【考え方】と【感じ方】が徐々に変化します。

このように人格とは【考え方】と【感じ方】と【行動の仕方】の三つによってなるものです。(ACのための12のステップ44頁下3行目)

今までは自分は周囲に傷つけられ、理解されず、その結果依存症者(アダルトチルドレンを含む)になった哀れな被害者であるという自己認識が支配的でした。

しかし霊的に目覚めたあとでは「自分は被害者ではない。ないどころか問題当事者であり、あるときには加害者でさえあった」という自己認識を持つようになります。

このすべてを指して【視点の変化】と呼びます。

このような自己認識を持つようになればしめたものです。
なぜなら「他人は変えられない。変えられるのは自分だけ」だからです。
また「他人は私自身を傷つけることができない。自分自身を傷つけていたのはいつだって他でもないこの私であった」からです。

この経験をすると、残りの人生では他者に傷つけられることが少なくなり、結果として人生は平安に満ちたものになります。

まさに『幸せは自分持ち』なのです。

ある人は「ちょっと待ってください。それは理想論であって、現実は周りの人々に傷つけられることもあるのではないですか?」と言われるかもしれません。

しかし考えていただきたいのは「人々との関係を変えようとしないのはどこのどなたですか?」ということです。

自分がなすべきことは棚に上げて、「人々がこうしてくれない」と周りの人々ばかりを責めるのは公平なことではありません。

実はこのような人間関係こそが病的なコントロール欲求であり、共依存症と呼ばれる依存症の一つなのです。

【視点の変化】を経験した私たちは次の段階に移ります。
それは視点の変化を確かなものにし、さらに【視点の変化】が【行動の変化】にまで及ぶように自分を訓練することです。

変化した行動パターンを使い続けていると段々に考え方と感じ方が変わってきます。
ある人々は行動の仕方を変えずに考え方や感じ方を変えようとします。
これは決してうまくいきません。
なぜなら考え方や感じ方は長期間にわたって行動の仕方が積み重ねられた結果出来上がったものだからです。

視点の変化と行動の変化は瞬時に、そして考え方と感じ方は徐々に変わっていきます。
だからこそ私たちは変化した行動パターンを実践し続ける必要があるのです。

この段階が『続けるステップ(10~12)』に該当します。

瞬時的経験 霊的に目覚める 与えられるもの
瞬時的経験 行動の仕方を変化させる 神の助けを得ながら自覚的にやるもの
漸進的経験 徐々に考え方と感じ方が変わってくる 気がついたら与えられていたもの
        

②日々の棚卸しは恨み・罪悪感・恐れ・後悔の不快感情を溜めないためにやる

ACが日々の棚卸しをやるのは他の依存症者と同じように自分の中に不快感情が再び溜まらないようにするためです。

不快感情が溜まっているところを「不快感情ダム」とすると、このダムの壁面には無数のひび割れがあり、少しでも不快感情がたまると圧力に耐えかねて決壊してしまいます。

アダルトチルドレンや依存症者にとってこの不快感情ダムが決壊する時が嗜癖に走るときなのです。

しかし一つだけダムが決壊しない方法があります。
それは不快感情という水を溜めないことです。
いくらヒビがたくさん入った壊れかけのダムだったとしても、水が空っぽならば決壊のしようがありません。

だから私たちは気をつけてダムが決壊しないために不快感情がたまらないように細心の注意を払う必要があります。

ある人々は「不快感情が溜まらないようにします」とは言わないで、「病的な人間関係嗜癖を使わないように注意したいと思います」と言います。

しかし使わないようにしたいと思って使わないでいられるなら、その人は無力ではありえません。

多くの人が不快感情がたまることよりも、嗜癖を使わないことに注力するのはそちらのほうが簡単だからです。
しかしこの安易さは決してうまくいきません。

不快感情さえ溜まっていなければ「病的な人間関係を使えばいいんだよ!」とささやく強迫観念が教える嘘を見破ることができます。

だからACを含めた依存症者の最大の防御法は自分のうちに不快感情を溜めないことです。

読者の皆さんにとって〈不快感情を溜めない〉ということは優先順位の一位にあるでしょうか?
もし二位以下であるなら、残念ながらあなたの人生に長期的で安定的なシラフが訪れることは決してないでしょう。

しかし「何を置いても自分の中に不快感情が溜まらないことを最優先事項」にするならば必ず全く変えられた人生を歩むことができます。

優先順位 不快感情を溜めないが第一 嗜癖を使わないが第一
結果 努力してないけど心が平安 一生懸命頑張っているけどいつもトゲトゲしており、最終的にはスリップする
        

③日々の棚卸しのやり方と注意点

ACに限りませんが、日々の棚卸しのスポットチェックをお聞きするとほとんどの方が【暴走した感情】や【傷ついた本能】をすっ飛ばして【性格上の欠点】から入ります。

これではまるで犯人探しであり、お聞きしながらありのパパは心の中で「この犯人探しを続けてきた結果、私たちは依存症になったんとちゃうんかい?!」と毒づくのです(笑)。

生物学上の親が頭ごなしに私たちを叱りつけたような真似をせず、「どの感情が暴走したのかな〜?」「どの本能が傷ついたの?」「使っちゃった性格上の欠点は何でしょうね?」と優しくいたわりながら自分自身に聴いていきます。

このことが即ち「自分自身の愛ある親としての役割を果たす」ことなのです。
この営みを長く続けると、そもそも自分だって自分自身の愛ある親の役割を充分に果たせない現実に気づき、私たちの親がたとえ毒親と呼ばれるような存在であっても「仕方ないかな」と自然に思える日がやってきます。

「感情が暴走しないようにします」という方がいます。
「ちょっと待ってよ。感情を再び否認してどうするの!」とありのパパは感じます。

感情は暴走することによって「ただいま、本能が傷ついたことをお知らせします」という警戒警報を鳴らして私たちに本能が傷ついたことを教えてくれているのです。

だから「また感情が暴走しやがった!」などというわけのわからない反応をやめ、「教えてくれてありがとう」と感謝をし、どの本能が傷ついたのかを探ります。

ここまで来ると自分自身へのケアーが充分にできていますから、性格上の欠点を探しても犯人探しにはなりません。
「あぁ、やっぱり今回も私が原因か!」と感じ入り、なぜか笑えてくるのです。

棚卸しの順番 性格上の欠点から入る 不快感情から入る
実態 犯人探し 愛ある親として振る舞いが自分自身の育て直しにつながる

この営みを繰り返しているといつかは「ひょっとして周りは敵ではなく、味方とは言えないまでも仲間かもしれない」との真の共同体意識が芽生えてきます。

これが【考え方】と【感じ方】が変わってきた兆(きざ)しです。

本気でかつ正しく適切なやり方で12ステップに取り組むなら必ず私たちは全く変えられた人生を生きることができます。

【まとめ】

  • ステップの10から12は「続けるステップ」と呼ばれます。それはステップの9までの取り組みで得た【霊的目覚め】を維持・拡大していくためです。その前提にはこの霊的目覚めを得ていることがあります。この記事を読んでおられるあなたは霊的に目覚めておられますか?

  • 霊的目覚めとは回復するのに充分な人格の変化ですが、その核心的部分は【視点の変化】です。そして【行動の仕方(行動パターン)】を変化させ続けていくと段々と【考え方】と【感じ方】が変わってきます。このように回復するのに充分な人格の変化には瞬時的経験と漸進的経験の両面があります。

  • この地上での歩みをまるで天国であるかのようにするのにお金も、社会的地位も、豊かな人間関係も必要ありません。必要なのは自分の中に不快感情を溜めないことだけです。

  • 自分自身の愛ある親になることがACとしての解決策です。そのために一番良いのは愛情深く自分自身に接しつつ日々の棚卸しをやることです。間違っても「また傷ついちゃって!仕方ないわね」などと言わないことです。

◎回復と平安と祝福を祈っています。

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